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口頭

低線量放射線の線量分布とDNA損傷分布の線量依存性

渡辺 立子

no journal, , 

細胞集団に低線量の放射線を照射すると、低線量になればなるほど放射線量の細胞ごとのばらつきが大きくなり、細胞集団のごく一部にしか照射されていないという状況になる。また、照射された細胞間、細胞内構造間にも線量の分布が生じる。微視的にみると、標的自体も、各標的内の線量もさまざまということになる。したがって、実際に低線量域で観測される線量効果関係も、さまざまな標的と応答機構の重なりの結果となると理解される。このように、線量の分布を微視的に把握することは、低線量放射線影響を原点から理解するために非常に重要である。そこで、微視的なトラックシミュレーションを行い、低線量域での細胞核等幾つかのサイズの標的におけるエネルギー付与の分布とDNA損傷分布を、系に与えられた全線量の依存性として解析した。本講演では、以上のような解析結果について、Cs-137から放出される$$gamma$$線,$$beta$$線の場合についてと、生体内に定常的に存在するK-40からの$$beta$$線や活性酸素との比較、相互作用の可能性についての検討結果を加えて紹介し、初期過程との関連する応答機構も含めて、低線量域での線量依存性を記述するために必要とされることを考察する。

口頭

マイクロビームを用いた線虫の化学走性学習に及ぼす放射線影響部位の探索

坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 服部 佑哉; 池田 裕子; 武藤 泰子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 浜田 信行*; 深本 花菜*; 小林 泰彦

no journal, , 

神経系に対する放射線被ばくの影響を明らかにすることを目的として、神経系のモデル生物である線虫を用いて化学走性学習に対する放射線の影響を調べた。特に、線虫のどの部位における放射線被ばくが、線虫の化学走性学習行動の変化を誘導するかは未だ明らかでない。そのため、炭素イオンマイクロビームを用いて、線虫の化学走性学習に対する直接的な放射線の影響部位を探索した。線虫の頭部(哺乳類での中枢神経に相当する神経環がある部位)と尾部にマイクロビームを照射した結果、どちらの部位へのマイクロビーム照射によっても、有意な化学走性学習への影響が観察された。頭部と尾部に放射線に応答する部位があるものと示唆されるが、今後、線虫の他の部位への影響を検討することにより、応答機構の全容を明らかにする予定である。本発表では、最新の成果を報告するとともに、得られた知見について議論する。線虫で見いだされた神経機能への放射線影響メカニズムは、ヒトなど高等生物の脳神経系機能に対する放射線照射の影響の解明に役立つ可能性がある。

口頭

X線照射が細胞周期に与える影響の放射光マイクロビームを用いた研究

成田 あゆみ; 野口 実穂; 横谷 明徳; 小林 克己*; 藤井 健太郎

no journal, , 

Fucci(Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator)発現細胞は、G1あるいはS/G2/M期にある細胞核中にそれぞれオレンジ及び緑の蛍光が観測されるため、顕微鏡下で細胞周期が容易に区別可能であり、細胞周期の同調培養などを行わなくても特定周期の細胞を狙い撃ちすることが可能になると期待される。本研究ではこのFucci発現HeLa細胞を試料として用い、KEK-PF BL27Bに設置されている放射光X線マイクロビーム照射装置による試料細胞の狙い撃ちを試みた。そのために照射時の細胞の位置情報をメモリーした細胞を培養しながら経時観察のための、タイムラプスオフライン顕微鏡システムを構築した。これらを用いることで、顕微鏡視野中にある異なる細胞周期の細胞(G1あるいはG2)を狙い撃ちし、さらにこれらの細胞と照射後24時間経時観察することに成功し、これによってG1あるいはG2期いずれの細胞周期で照射した場合もG2期で周期が停止あるいは遅延するという結果を得た。

口頭

線虫の筋運動に対する放射線影響の照射部位依存性

鈴木 芳代; 服部 佑哉; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 武藤 泰子; 池田 裕子; 小林 泰彦

no journal, , 

これまでに、モデル生物線虫を用いて運動機能に対する放射線影響を調べ、全身照射によって全身運動や咽頭ポンピング運動(餌の咀しゃく・嚥下)が一時的に低下することを明らかにした。しかし、放射線による筋運動の低下が全身の組織への影響によるものか一部の細胞への影響によるものかは判別できなかった。本研究では、線虫の体のごく一部を狙って重イオンマイクロビームを照射し、筋運動に対する放射線影響が照射部位によって異なるか否かを調べることを目的とした。高崎量子応用研究所のマイクロビーム細胞局部照射装置を用いて、線虫(成虫)の頭部,中央部,尾部の直径20$$mu$$mの範囲の細胞群を狙って炭素イオンマイクロビームを照射した。各個体1箇所のみを狙った。照射直後に線虫を寒天平板上に移して運動を撮影し、動画をもとに全身運動については20sの頭部屈曲回数を、咽頭運動については1s間のポンピングストローク回数を計数した。なお、照射時に線虫の運動を抑制するために、線虫の腹囲程度の溝が形成されたシリコン樹脂製マイクロデバイスを使用した。全身運動は、頭部,中央部,尾部への照射のいずれでも非照射群に対して有意に低下したことから、体の一部でも照射されれば低下することが明らかになった。一方、咽頭ポンピング運動は、頭部及び中央部への照射では非照射群に対して有意に低下したが、咽頭運動にかかわる神経・筋が存在しない尾部への照射では変化しないことが初めて明らかになった。

口頭

線虫の咽頭筋のモデル化; 放射線影響解明のための計算論的アプローチ

服部 佑哉; 鈴木 芳代; 辻 敏夫*; 小林 泰彦

no journal, , 

これまでに、放射線を線虫の全身に照射すると、エサを咀しゃく・嚥下する咽頭筋の高速な収縮・弛緩(ポンピング運動)の頻度が一時的に低下することを明らかにした。このことは、線虫のポンピング運動を制御する神経細胞や咽頭筋細胞に放射線が何らかの影響を与えている可能性を示唆しているが、個々の細胞にどのような変化が生じているかは不明のままである。そこで、本研究では、数理モデルを用いて個々の細胞の活動をシミュレートし、放射線による線虫の運動変化を細胞レベルで探る手法を提案する。線虫のポンピング運動を担う咽頭筋細胞の接続構造は既知であるため、実構造に基づいた数理モデルを構築し、筋細胞の活動として膜電位をシミュレートする。また、各筋細胞の膜電位変化に伴って咽頭筋全体が発する電位(咽頭筋電位)を計測することができるため、本モデルを用いてシミュレートした個々の咽頭筋細胞の膜電位から咽頭筋電位を算出することで、本モデルの咽頭筋電位と実測値が比較できる。数値実験により、本モデルを用いて算出した咽頭筋電位が、野生型線虫(非照射)の咽頭筋電位をよく再現していることを確認した。また、ポンピング運動に異常のある突然変異体に着目し、機能異常のあるギャップ結合の特性をモデルに反映させることで、当該突然変異体の応答を再現することにも成功した。講演では、本手法を応用して、ポンピング運動を変化させる放射線の作用機序を細胞レベルで探る試みを紹介する。

口頭

DNA二重鎖切断による染色体損傷の細胞周期依存性の数理モデル

大内 則幸

no journal, , 

細胞におけるDNAの収納構造であるクロマチン繊維は、細胞周期に依存してドラスティックにその構造を変化させる。放射線により生じたDNAの二重鎖切断の結果、クロマチン繊維が切断を生じるが、適切に修復されるか、あるいはされないかによって染色体異常が生じたり、あるいは突然変異が生成されてその後の生物影響へと進行していく。今回、溶液中の染色体の実験データをもとに弾性体の近似、及び統計力学的近似を用いて微分方程式でクロマチン繊維をモデル化して、溶液の場合や真空中などの条件でクロマチン繊維の構造変化や動態をシミュレーションした。またモデルに切断を作成して、その切断箇所の動的ダイナミクスを調べることで、その損傷の修復しやすさなどに関して調べた。その結果、切断のタイミングや溶液の粘性によっては、切断した箇所を繋ぐために修復酵素が到達する時間よりも数倍速く切断端が離れてしまうことがわかった。さらに細胞周期に依存した凝集状態の違いを考慮したモデルを用いて、切断端の動態との関係を調べた結果についても報告する。

口頭

脱塩基部位の局在性評価法の開発と放射線照射DNAへの適用

赤松 憲; 鹿園 直哉

no journal, , 

電離放射線によって生じたDNA損傷は、完全に修復されなければ突然変異や発癌の原因になるといわれている。特に、高LET放射線の飛跡周辺や二次電子の飛跡末端で生じやすいとされている、いわゆるクラスター損傷(複数の損傷がDNA上の狭い領域に集中的に生じている)は修復が困難とされているが、その実体はほとんど明らかになっていない。そこでわれわれは、このような仮説的な損傷を実験的に解明するために、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を利用した損傷位置局在性評価法の開発を行ってきた。損傷のひとつである脱塩基部位(AP)がランダムに生じると予想される熱処理(70$$^{circ}$$C, pH5)DNA(pUC19, 2686bp)をモデルとして用い、FRET実験データ点と損傷間隔がランダムな場合(指数分布)の理論曲線を比較した。その結果、両者は一致することがわかった。熱処理DNAにはAPがランダムに存在することを実験的に初めて確認できたといえる。また、実際にコバルト60$$gamma$$線やヘリウム粒子線を照射したDNAに対して本FRET法を適用した。それらの結果も合わせて報告する。

口頭

DNA分子上の放射線損傷分布とDNA修復経路干渉

白石 伊世; 椎名 卓也; 菅谷 雄基; 鹿園 直哉; 横谷 明徳

no journal, , 

DNAの1$$sim$$2ヘリカルターンに複数の損傷が局在化したクラスターDNA損傷は、突然変異などの生物影響を引き起こす主要な原因の一つであるとされている。クラスター損傷はさまざまな損傷から構成されているため、これらに対する細胞応答において異なる修復系が同時にあるいは逐次的に関与することが予測される。本研究では、クラスターDNA損傷に対する塩基除去修復酵素の作用機序の違いがクラスターDNA損傷の難修復特性にどのようにかかわるかを明らかにすることを目的とした。イオンビームを照射したプラスミドDNAで、2種類のグリコシレースの処理の順番をさまざまに変えインキュベートし、酵素活性で生じたニック(SSB)量を立体構造変化としてゲル電気泳動法により定量した。C$$^{6+}$$イオンビームを照射した場合はFpgを先に処理したものの方が、同時処理やNthを先に処理したものより損傷を持たないDNAの残存量が小さい傾向にあった。さらに、DNAの熱変性を利用する新しい分析法を用いることで、従来検出できなかったプラスミド上の複数の損傷を検出することができると期待される。講演では、上述した逐次処理にみられた収率の差をもたらす原因としてのクラスター損傷の構造について発表する。

口頭

APサイト及びこれを含むクラスターDNA損傷収率の放射線の線質及びLET依存性

椎名 卓也; 白石 伊世; 菅谷 雄基; 渡辺 立子; 鈴木 雅雄*; 横谷 明徳

no journal, , 

本研究では、APサイト及びこれを含むクラスターDNA損傷の生成過程の、放射線のトラック構造及びLETに対する依存性を明らかにすることを目的とする。試料としてプラスミドDNA水溶液を用い、これに対してCイオン及びX線を照射し、生成したAPサイトを定量した。また試料溶液中のスキャベンジャー能を変えることで、APサイト誘発における拡散性OHラジカルの寄与を調べた。その結果、スキャベンジャー能が高くなるとAPサイトの収率は低下し、またその減少のスキャベンジャー能依存性がDNA鎖切断のそれとよく似ていることが明らかになった。これらの結果から、鎖切断とAPサイトの生成が同じ反応中間体であるOH-adductに開始され途中まで同じ経路をたどり、塩基損傷の生成経路とは異なることが示唆された。現在これらの実験データをモンテカルロ法によりシミュレーションしており、発表ではAPサイトを含めたDNA損傷生成の一般モデルについて提案をする予定である。

口頭

酸素K殼イオン化エネルギー領域の軟X線照射によるDNA損傷の収率変化

菅谷 雄基; 椎名 卓也; 白石 伊世; 藤井 健太郎; 横谷 明徳

no journal, , 

放射光を光源として用い、軟X線のエネルギーの違いがどのようなDNA損傷の違いをもたらすかについて、その生成過程を含めて研究している。過去の研究から、酸素のK殻イオン化を引き起こすと、塩基損傷収率が窒素のK殼イオン化の収率と比べ急激に増え、酸素の1sから$$sigma$$$$^{*}$$への励起を選択的に引き起こしたときはDNA損傷の収率が1sから$$pi$$$$^{*}$$の励起やイオン化と比べ減少することが報告されている。今回は、これまでの試料とは異なり、緩衝液の塩を含まないプラスミドDNA(pUC18)のみを薄膜の状態にし、SPring-8のBL23SUから得られる単色軟X線を照射した。この試料を用いることで、塩に含まれる酸素のK殻イオン化による影響を排除することが可能となる。今回、DNA薄膜の作製方法を改良し、より薄い厚さの均一なリング状の膜を得ることに成功した。また、AFMを用いた膜厚測定とその結果を用いた吸収線量の評価を行ったので、これらの結果を報告する予定である。

口頭

SPEEDI/WSPEEDIの活動と今後の課題

茅野 政道

no journal, , 

福島第一原子力発電所事故で行った大気拡散モデルと環境モニタリングの融合による大気放出量の逆推定や、狭域及び広域の大気拡散予測について解説する。また、これらの経験を通じて明らかになった計算役割や、今後必要となる研究開発と利用についても言及する。

口頭

クラスターDNA損傷とその周辺のDNA損傷の突然変異の発生頻度に関する解析

高橋 桃子; 鹿園 直哉

no journal, , 

DNAは生体内においてさまざまな要因により損傷を受ける。損傷により誘発される生物影響を防ぐために、生体内には多くのDNA修復機構が存在することが知られている。一方、DNAにおいて局所的に複数の損傷が生じたものはクラスターDNA損傷と呼ばれるが、クラスターDNA損傷は修復されにくい損傷であるため突然変異や細胞死の原因となるとされているが、どのような因子が突然変異の生成に関与しているのかという点については未だ不明な点が多い。本研究では、クラスターDNA損傷の配置によって、DNAの突然変異頻度がどのように影響されるのかについて、大腸菌を用いて研究を行った。一組のクラスターDNA損傷の変異頻度に着目して、周囲の損傷の有無による変異頻度の変化を解析したところ、当該クラスターから10塩基離れた箇所に単独損傷が存在した場合、そこからさらに10塩基離れた箇所にまた別組のクラスターDNA損傷が存在した場合、当該クラスターから20塩基離れた箇所に別組のクラスターDNA損傷のみがある場合では変異頻度の変化をみることはできなかった。今回の発表では、これらの結果を中心に、複数の損傷が近接することによる突然変異誘発機構について考察する。

口頭

UV-A照射染色体の移入による遺伝的不安定性の誘発

漆原 あゆみ; 児玉 靖司*; 横谷 明徳

no journal, , 

電離放射線照射による生物影響の中でも、遺伝的不安定性は遅延性影響に関与しており、その誘発にはDNAの2重鎖切断が関与すると考えられている。しかし、2重鎖切断は致死的な損傷であることから、遺伝的不安定性の誘発原因は2重鎖切断そのものではなく、2重鎖切断が修復された後に残存する何らかの損傷であると考えられる。そこで、非2重鎖切断型の損傷である酸化型塩基損傷に着目し、UV-A照射によって生じたDNA損傷が遺伝的不安定性を誘発するのかを明らかにするために研究を行った。非2重鎖切断型損傷の生成にはUV-Aを用い、非照射のマウス線維芽由来細胞株であるm5S細胞にUV-Aを照射したヒト21番染色体を微小核細胞融合法によって移入することによって、非2重鎖切断型損傷が遺伝的不安定性誘発に及ぼす影響を調べた。ヒト21番染色体を移入した損傷導入細胞内のUV-A照射染色体は、ヒト21番染色体特異的な染色法によって染め分け、照射染色体と非照射染色体のそれぞれの染色体異常誘発頻度を調べた。その結果、UV-A照射染色体を移入した非照射のレシピエント細胞では、照射されたヒト染色体だけでなく、非照射であるマウス染色体の染色体異常頻度も増加していた。また、UV-A照射染色体移入クローンはいずれも染色体数の増加による異数体化あるいは多倍数体化を起こしており、その染色体数の平均値は移入染色体の照射線量の増加に伴い染色体数が増加していた。これらの結果は、UV-A照射で生成した非2重鎖切断型の損傷の量が遺伝的不安定性の誘発に影響することを示唆している。

口頭

放射線のエネルギー付与の微視的空間分布における不均一性とマイクロビーム

舟山 知夫; 横田 裕一郎; 池田 裕子; 小林 泰彦

no journal, , 

放射線細胞生物学領域における研究では、放射線照射を受けた細胞の生死を研究の起点とし、その細胞において引き起こされる生物現象の機構を解析することを根源的なパラダイムとしてきた。しかし、細胞集団に照射された放射線量が、その素線量に近い領域となると、細胞集団内においてそのエネルギー付与分布が不均一となり、その結果、細胞集団内では、エネルギー付与を受けたヒット細胞と、なされなかった非ヒット細胞が混在し、ヒットの有無に伴う応答の差異を生じる。これに加え、ヒットした細胞から非ヒット細胞への細胞間情報伝達機構を介した放射線応答であるバイスタンダー効果の影響が加わるため、低線量放射線被曝における細胞集団応答は、高線量域の応答とは異なる複雑な反応を示すと考えられる。原子力機構高崎量子応用研究所では、このような細胞集団の応答現象を解析することを容易にする重イオンマイクロビーム細胞照射装置を用いて、細胞集団の放射線応答機構の研究を進めてきた。本講演では、これまでに高崎の重イオンマイクロビーム装置を用いて進められてきた細胞集団応答研究の概要と、そこから導き出されるこれからのあるべき「線量」の概念について議論する。

口頭

重イオンマイクロビームを用いた異細胞種間バイスタンダー効果解析のための実験系構築

池田 裕子; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 金井 達明*; 小林 泰彦

no journal, , 

これまでに、ヒト肺がん細胞株H1299/wt${it p53}$と、ヒト胎児肺由来の正常繊維芽細胞株WI-38を用いた異細胞種間バイスタンダー効果の解析を、細胞増殖死を判断するコロニー形成能の変化に着目して実施してきた。その結果、重粒子線誘発バイスタンダー効果では、照射細胞の種類が異なるとその応答が変化することを見いだした。そこで本研究では、この現象に関与する細胞内/細胞間分子機構を解明するため、重イオンを細胞に狙って照射できる日本原子力研究開発機構の重イオンマイクロビーム照射装置を利用することにした。当該装置はバイスタンダー効果解析に有効なツールであり、ブロードビーム照射では明らかにできなかった機構の解明が可能となる。しかし、同細胞種間バイスタンダー効果に関するマイクロビームを用いた研究報告は多いものの、異細胞種間で重イオンマイクロビームを用いた報告はまだなく、解析実験系の確立が必要となる。現在、がん細胞と正常細胞を同一の照射容器に混在させ、その一部の細胞のみを重イオンマイクロビームで狙って照射するための実験系を構築中であり、そこから得られた知見と今後の展開について報告する。

口頭

Dependence of induction of clustered DNA damage on radiation track structure

横谷 明徳; O'Neill, P.*

no journal, , 

Most mechanistic studies of clustered DNA damage to date have focused on the yields of clustered damage induced by low- and high-LET radiation, using base excision repair proteins as enzymatic probes to detect base lesions or AP sites. We present the dependence of the yields of clustered DNA damage on radiation track structure, previously studied using plasmids as simple model DNA or genomic DNA in mammalian cells. We also note that the enzymatic method have some technical difficulties to detect base lesions in a cluster because of the enzymatic efficiency reduction. Some new techniques, such as DNA denaturation treatment, have been applied to overcome this problem. These new experimental evidences will also be presented, and compared with in vitro data of repairability of artificial clusters incorporated into oligonucleotides.

口頭

タイムラプス法で観測したFucci発現細胞の細胞周期へのX線照射の影響

横谷 明徳; 野口 実穂; 神長 輝一; 坂本 由佳; 嘉成 由紀子; 成田 あゆみ; 藤井 健太郎

no journal, , 

本研究では、Fucci(Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator)発現したHeLa細胞に対してX線を照射し、細胞周期への照射の影響を観察した。Fucci発現細胞ではG1あるいはS/G2/M期にある細胞核中にそれぞれ異なる色の蛍光が観測されることから、顕微鏡下で容易に区別できる。培養ディッシュに播種した細胞に、X線照射を行った。照射後細胞ディッシュを蛍光顕微鏡に設置された細胞培養ステージに移し、24$$sim$$48時間15分程度の間隔で画像撮影を行った。得られた画像は、顕微画像タイムラプス解析ソフトで動画像として時系列再構築を行った。20Gyの照射により次第に緑色の細胞が増加し、10時間程度でほとんどが緑色の細胞になった。また、ディッシュの半分だけ照射した場合でも、非照射部位の細胞のほとんどが緑色になった。これらの結果は、照射により細胞周期がG2で顕著に休止し、通常8時間程度続くG2期間がほぼ倍になることをしめしている。さらにこの細胞周期遅延効果が非照射部位にも及ぶことから、新しいバイスタンダー効果がある可能性を見いだした。

口頭

放射線照射による細胞周期変化とミトコンドリア形態変化の関係

野口 実穂; 嘉成 由紀子; 神長 輝一; 坂本 由佳; 成田 あゆみ; 藤井 健太郎; 横谷 明徳

no journal, , 

放射線による細胞影響は核DNAへの損傷を起点として多くの研究が行われているが、低線量放射線被ばくなど細胞質のみがヒットを受けた場合の細胞影響を明らかにすることも必要不可欠である。ミトコンドリアは細胞質に広範囲に存在する細胞小器官であり、独自の遺伝子を持ち、エネルギー産生、細胞死の調節など細胞の重要な機能を担う。そこで、本研究では細胞質の中でも特にミトコンドリアに注目し、ミトコンドリアに対する放射線の影響を明らかにすることを目的とした。本研究では、ミトコンドリアをMitotracker Red、核をHoechst33342で染色し、X線照射後4日間経時的にミトコンドリアの形態変化を観察した。また細胞周期はNMuMG-Fucci2細胞を用い、核の色素変化によりその周期を同定した。その結果、ミトコンドリアは線量の増加ともに細かく断片化され、断片化ミトコンドリアを持つ細胞数は照射後3日目がピークになり、その後は減少することが明らかになった。また、8Gy照射により8割以上の細胞はG1期で細胞周期を停止することも明らかになった。本発表では放射線照射後のミトコンドリアの形態変化と細胞周期変化との関係性について報告する。

口頭

抗ガン剤とX線との相乗効果によるDNA切断の塩基レベルでの位置特異性の同定

五十嵐 翔祐; 大貫 敏彦; 坂本 文徳

no journal, , 

本研究では白金製剤を結合させたDNAにX線を照射し、サンガー法を用いた切断位置特定法により、DNAの一塩基レベルでの切断位置を特定し、相乗効果を塩基レベルで解明することを目指す。DNAにX線を100Gy照射すると、切断が確認できる。しかしこの切断には塩基特異性が見られなかった。シスプラチンを結合させてX線を照射しないDNAでは、塩基レベルでの切断は起きていなかった。一方、シスプラチンを結合させたDNAに100GyのX線を照射した場合、X線を照射した場合の切断位置に加え、新たな位置での切断を確認した。その切断位置は、DNAのアデニンとグアニンの位置に一致した。さらに、DNAのすべてのアデニンとグアニンの位置で切断が起きているわけではなかった。また、シスプラチンを結合させたDNAへのX線照射量を150Gyに増加させても、切断位置がほぼ同じであることを確認した。これらのことから、シスプラチンの存在によりX線による塩基レベルでの新たな切断が生じること、及び切断位置が、シスプラチンが結合している位置に特異的であることが明らかとなった。Zhengら(2008)は、シスプラチンの白金原子に放射線が当たったときに発生する二次電子がDNAに損傷を与えるために、DNAの損傷が増加することを示唆している。われわれの結果は、白金原子で発生した二次電子がシスプラチンの結合したアデニンとグアニンに作用して切断する可能性を示している。

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